STORY
「ねぇ、あの丘から見える夕日。見に行かない?」
彼女は、屈託のない笑顔でそうつぶやいた。
東京から飛行機を乗り継いで、一日がかりの太平洋上に、人口1000人と少しの小さな島があった。
それが、俺たちが住んでる島。
船の定期便は、週に1,2度。
飛行機の定期便は、1日2往復。
そんな島の小さな分校に、この春一人の転校生がやってきた。
彼女は、すぐにこの島を好きになった。
特に、島で一番高い丘から見る夕日を、暇さえあれば毎日のように見に行っていた。
分校には、1学年10人程度しかおらず、全校生徒も40人に届かない。
そんな「だれもが顔見知り」のような環境で、最初のうちは少し騒がれもしたけど、もともと明るいこの島の人の気質もあってか、彼女が転校してきたところでやることはこれといって変わらなかった。
朝起きて。 学校に二桁もいない先生たちと毎日のように顔を合わせ。 仲間と騒いで。
そして時に、夕日が美しく照らす、あの公園をめざす。
あまりにも、当たり前すぎて、でも楽しかった日々。
この話は、俺たちが共に過ごした、一生忘れられない夏のお話。